前回は設備トラブルの把握・予兆保全について、「製造現場における設備の保全業務がいかに重要であるか」「設備由来のトラブル発生を予兆することがいかに重要であるか」を説明した。今回は保全業務をいかに効率的に行うか、製造現場での実態を解説する。

製造現場に多い「3つの課題」

 設備保全業務にはさまざまな課題がある。ここでは製造現場でよく見る3つの課題について紹介をしたい。

(1)点検箇所が多い
 工場で稼働している設備には、単純な切断系の加工機からプレス機のようなもの、大型なものになるとマシニングセンターのような複雑な動作をする設備など、実に多種多様なものがある。設備は大型のものになればなるほど、正しく稼動させるためには点検すべき箇所も多く、保全業務が大変にならざるを得ない。現場で、大規模なマシニングセンターを長時間停止し、保全チームが隅々まで動作点検作業をしている様子を見ていると、適切な保全作業を定期的に全点検箇所で行うことの大変さを改めて実感する。

(2)保全作業が複雑
 点検や清掃作業の手順の複雑さも、作業の難易度を高める事由となっている。計器類やスイッチ類の操作確認は手順が決まっており、その手順通りに動作チェックをしなければ正しい動作が検証できたとはいえない。特に、古い加工設備の場合は、パーツの清掃のみならず、それを取り外してオーバーホールしながらの作業となったりするため、保全作業が複雑さを極める。

(3)紙での管理が多い
 保全業務のほぼ全てが紙のチェックリストや帳票で管理されていることが圧倒的に多い。筆者がこれまで訪れた工場ではほぼ100%の確率で紙のチェックリストや保全管理台帳で管理していた。保全業務が、人が機械相手に点検作業をするアナログな管理作業であると思い知れば思い知るほど、紙のチェックリストや点検内容を書き込んだエクセルシートを使おうとする気持ちは分かる。

 たまに、「エクセルに点検内容を書き込めば、データ化されているではないか」といわれるが、エクセルシートを使っていても、それで設備トラブルの傾向などが分析できるわけではない。これは、紙の帳票を電子化したに過ぎないわけだ。