OKANOのトリクミ
OKANO PARTNERS INDUSTRIAL-X

OKANO PARTNERS
INTERVIEW
INDUSTRIAL-X

設備産業
DX最前線

OKANOが活動を共にするパートナーをゲストに迎え、これからの産業、これからの地域について、共に考えるOKANO PARTNERS。今回は業務・資本提携パートナーであり、数々の企業、自治体のDX推進アドバイザリを手掛けてきたINDUSTRIAL-X代表の八子知礼さんをお迎えした。代表の岡野が「日本の設備産業の復権には何が必要なのか」をテーマに話を聞いた。

八子 知礼
TOMONORI YAKO
INDUSTRIAL-X代表取締役

1997年松下電工(現パナソニック)入社。製造業の上流から下流まで経験した後、アーサーアンダーセン、デロイトトーマツ コンサルティング、シスコシステムズでビジネスコンサルタントとして新規事業戦略立案、バリューチェーン再編等を多数経験。2019年4月にINDUSTRIAL-Xを起業、代表取締役に就任。

筋トレの話から
はじめよう

八子
直接会うのは少し間があきましたが、さらに身体絞られましたね。
岡野
10ヶ月で体重14キロ減。体脂肪率26%から13%まで落としました。身体が軽いし睡眠の質もあがって短時間で疲れがとれる、頭も冴えるし、良いことだらけです。一つだけ悪いことは筋肉の話ばかりするようになってしまって…(笑)。
八子
最初にお会いした時も仕事や専門的なお話よりは筋トレの話が多かったですよね(笑)。
岡野
プライベートな集まりだったので、仕事の話をするのは野暮かなと(笑)。まあでもお互いワーカホリックなところがあるから節々に出てしまいますよね。以前からお噂は聞いていましたが、実際にお会いして絶対一緒にやりたいと直感しました。
八子
OKANOの中期経営計画をお聞きして、100年企業でありながらこの先どんなビジョンを描くのか、今の産業構造をどう変えるのか、デジタル化を進めていくけれど手段はデジタルだけじゃない、などといったこれからの話をさせていただきました。
岡野
そこから話が進んで業務提携に発展し、2022年から本格スタートすることになりました。我々OKANOも含めて基幹産業、製造業を含む、いわゆる設備産業はDXが遅れています。直近は、そういった業界のDXを推進していくパートナーとして一緒に活動していければと思っています。
八子
日本の設備産業がモダン化できてないところに僕たちも大きな課題感を持っています。モダン化していこうとした時にデジタルは避けて通れない。そして今後20年で日本の労働人口はぐっと減るので、少なくとも20%以上は労働生産性を上げないといけないんです。きちんとビジネスを成立させて競争力を担保していこうとすると、おそらく30%から40%の生産性の改革が必要になる。DXの本質はその先にありますが、従来の競争力を維持するという観点においてもデジタル化は必須です。
岡野
いきなりDXを進めることは難しいので、まずはその下地、素地をつくるために設備産業全体のデジタライゼーションに微力ながら貢献したい、その旗を振るためにも当社自身がそれを体現した姿に変わる、これを同時並行で進めていきたいと考えています。
八子
そこに対するOKANOの「やるんだったら徹底的にやる」という腹のくくり方は尊敬に値しますし、自分自身が徹底的に変わりながら産業全体に広めたいというところに非常に共感して、もうぜひ一緒にやりましょうというのが我々の想いです。

設備産業は
再起できるのか?

岡野
日本全体の競争力が低下しています。デジタライゼーションが進んだとしても、今の延長線上にいるだけでは日本の設備産業はかつての勢いを取り戻すことは難しいと思いますが、八子さんはどうお考えですか?
八子
デジタルだけではうまくいかないでしょうね。価格競争や最終的な製品・生産物だけで勝負するマインドをまず変える必要があります。そのために必要なのは、人間力の向上ですね。一人ができる仕事を質的に増やさないといけないと考えています。例えば、かつて工場の現場で活躍していた人たちが、その技術を使って外部の会社のアドバイザーやコンサルとして振舞っても構わないわけです。そうすると一人で二つの職種をかけもちできる。これを推し進めて海外にも展開していけば、競争力を回復できる可能性はあると思っています。
岡野
まさにDXの“X”の部分ですね。モノからコトへのシフトは設備産業においても重要ということは、私も強く共感します。国内労働人口が減少する中でこれに挑戦していくためにも、デジタライゼーションは急務です。八子さんは日本の設備産業のDXが進まない要因はどこにあるとお考えですか。
八子
最近よく話題に挙がるのは人の問題です。一つはITリテラシーがない。そしてもう一つの問題は、単なる業務効率化を超えて、デジタルを使ってどうしたいのかという想いがないことです。
岡野
私も業界の方々と話しますが、皆さんDXに取り組みたい気持ちはあるけれど、まだ一歩踏み出しきれていない様子です。時代的にDXが必要なのは自覚しているんだけれど、経営トップも具体的な構想はなくて、現場に「よし、DXやってみて」って言って、終わるパターンが多いと思うんです。DXの意味や意義、構想をしっかり持てると変わってくるのかなとは思うんです。
設備産業の企業群が一足飛びにその状態になるのはなかなか想像しにくいですが、変えていくにはどうしたらいいのでしょうか。
八子
そうですね。柔軟な考え方を身に付ける必要もありますよね。
これまでプライドを持って自分の領域を得意としてきた人たちに、例えば、扱う素材が金属じゃなくてプラスチックに変わります、という話をすれば初めは必ず難色を示すでしょう。だから、工場の端っこの方で一旦プラスチックの工程も立ちあげてみる?とトライしてみる。すると意外とできたりするんです。トライアンドエラーで、そういう人たちが持っている挑戦する気持ちを引き上げて、人の意識を変えていくことも重要ですね。
これはもうデジタルの力だけじゃないですね。そういうのが必要なんじゃないかなと思います。

OKANO
MANUFACTURING
PARTNERS

八子
僕はOKANOが掲げている“The Spirit of Manufacturing” という言葉が好きで、今まではバルブというモノを売っていたかもしれないですけど、意味を拡張すれば製造業の魂っていうのをちゃんと伝えていく、売っていくということになります。ノウハウであるとかサービスであるとか、もしくはモノに付帯するITの仕組みとして売っていく。商材が今まで鉄やメンテナンスだったところから多面的、複合的にスピリットを売っていくという形に変わっていく。
例えば発電所がクライアントだったら電気の流れのトラッキングや、過剰な電力消費を抑えるためのマネージメントの方法など、OKANOとして提供するサービスを多様化していく。これが産業構造を変えていくことに繋がってくると思っているんです。
岡野
“The Spirit of Manufacturing”は私が考えたんですが、まさにその想いを込めています。想いを読み取ってくれる方がいて嬉しいです。魂を売るって表現は語弊がありそうですけど、ポジティブな意味でですね(笑)。
既存事業を大事にしつつ、いたずらな多角化でもなく、培ったスピリットを礎に、モノに固執せずに今、社会にとって優先順位が高い課題に取り組んでいきたい。日本の設備産業がかつての勢いを取り戻すことは、この業界に草創期から携わってきた当社の悲願であり使命であると考えています。
私も若いと思っていましたが、40歳を迎えてあまり時間はないと思い始めました。国内設備産業の復権、そのためのDX、これらをもっとドライブさせていくにはどうしたら良いのでしょうか?
八子
そうですね。僕はOMPというのを立ち上げてはどうかと思っているんです。OMPはOKANO MANUFACTURING PARTNERSです。一緒にやる仲間を募集してます、というのをこの指止まれで集めて、OKANOはオポチュニティとフィールドを提供するんです。僕自身、そういう仲間を集めてエコシステムを作っていくのは比較的得意ですし、所詮一社ではできないので、いろんな会社さんを連れてきて、どんとやる。“The Spirit of Manufacturing”を伝えていくため、もしくは横展開していくために、もちろんその先の日本の産業を元気にしていこうというところに賛同してくれる企業は一緒にやらないかっていうのもありうるかなと。
岡野
X-BORDER事業部という新しい事業部でやろうとしていることがまさしくそれに合致しますね。X-BORDERはより広い範囲を対象としていますが、設備産業に特化した企業チーム作りは確かにしたいことです。製造業は元々そういうノウハウを隠したがってきましたが、今はそれがマイナスだなと思います。敢えてオープンにすることによって、結果、パートナーや仲間ができて、そこからさらに発展する場合もある。そういった意味でもっと情報発信していくべきかなと思うんです。
八子
そう。情報自体もストックしておくだけじゃなく稼いでもらう。社内のアセット、ノウハウ、リソースを外部に売ってもいいと思うんです。でもその発想が出にくい。それはITの業界の言葉がわかりにくかったり、もしくはうまくビジネスモデルとして伝えることができなかったからです。IT業界も、ものづくり企業の資産や価値を理解しなければならない。

情熱という
火種を燃やすには

岡野
INDUSTRIAL-XさんはD(デジタル)よりX(トランスフォーメーション)の比重が9割の会社だからいいですよね。Xのほうに軸足がある企業がものづくり企業とタイアップしながら進めていくのが大事かなと思っていて。IT企業が最新、最先端というわけではないと思うので、本当の意味で互いを尊重しながらタイアップが生まれるとよりいいのかなと思います。
八子
そうですね。ものづくり企業が、モノを作っているうちにソフトウェアを作ったり、生産の仕組みなんかも作ったりして、外の人から「それIoTですね」って言われた時に「そういうつもりなかったんです」みたいな話になって全く構わないと思っていますし、そちらのほうが自然ですよね。
ITの人たちって面白いことに、ソフトウェアを書いてるときに「ものづくり」っていうんですよ。僕も製造業出身ですから、はじめは違和感があったんですが、考えてみれば彼らもITサイドからものを作るという発想にいたわけですね。だから、広く“ものづくりをしている産業”と言っても構わないと思っています。
岡野
表現的な技術だったり使う言葉が違うだけで、本質的なところは一緒だなと思います。
お互いに魂を込めて、情熱を持って、リスペクトしあえなければいけない。そして魂や情熱を他の人にわかってもらうための論理性と、具体的に示せる技術も必要だと思います。 私はなんとなく日本全体が魂、情熱の火種が弱くなっている気がするのですが、八子さんはいかがですか?
八子
僕は火種はあると思ってます。ただ火種をどうやって燃やすのかは工夫が必要ですね。
経験したことのない人に経験をしてもらうには一緒にやってあげるのが必要じゃないかと。

OKANOさんには今、ものすごく面白い人材が入ってきてるわけじゃないですか。我々も参画させていただいて、なおかつOKANO MANUFACTURING PARTNERSみたいなのができてくると、一気に面白い仲間を集めてきやすくなる。あと、コザや東京にオフィスをつくって物理的な場所も多面的に開いていこうとしてますし、そこにまた面白い人たちが集まってくる。
当然ながらエネルギーの要ることなんですが、エントロピーの量だけ何かしら返ってきますから、これから面白くなるのではないかと僕自身思ってます。

設備産業に
新たな潮流を

岡野
私はあんまり自分が前に出ていくのが好きじゃないんですよね。
でも、最近は出ることも必要だと感じていて、どうせ出るならしっかりと筋トレして、いつでも脱げるように(笑)。
八子
それを見せていってもいいんじゃないですか?OKANO式筋トレで俺はこうなったんだっていうのを毎回ね(笑)。
ふざけた話に聞こえるかもしれませんが、直接のビジネスと関係ない雰囲気が企業にあるのも重要です。これって“The Spirit of Manufacturing”のOKANO式を、例えば身体に転用した場合の考え方だとも言えます。
OKANOの営業さんが先々で「うちの会社、社長がストイックで筋トレイベントを毎月やってるんです。社長がいきなり脱いで、やる気がない人たちに対して迫るんですよ。これって設備産業製造業が筋肉質になるっていうところと似てませんか?」という話にできる。このネタがあるだけで他社とは圧倒的に違うと思うんですよ。DXじゃなくてマッスルトランスフォーメーションかもしれませんけど(笑)。
岡野
マッスルトランスフォーメーションはいいですね(笑)。
話を戻すと、当社は従来の領域や、身の丈を超えたミッションに挑戦を始めています。当然自社のリソースだけではこれを成し遂げるのは難しい。でも、まずは旗を立てることで、これまで触れることもなかった領域から優れたパートナーさんと続々と繋がるようになってきましたし、それに手ごたえと可能性を感じています。これを業界全体に繋げていきたいですね。
八子
僕はOKANOはフロー、流れをコントロールする企業になるといいのではないかと考えています。最適な流れを高度に制御する企業です。世の中のありとあらゆる流れ、油もそうですし、水もそうですし、空気もそうです。場合によっては情報の流れ、ノウハウの流れ、人の流れなんていうのもあると思う。そういうものを全てコントロール、制御、最適化、自動化していく、そういう会社を目指すのであれば、種はいっぱいあるわけです。それが一つ面白いなと思ってます。
もう一つは、金属にこだわらないっていうのも面白い。これはものすごく大きなチャレンジですけど、“The Spirit of Manufacturing”であれば素材はなんでもいいんじゃないかと。品質および非常に高度な仕様を要求されるものをうまく作る、そういったスペシャリストだっていう風に定義すれば、素材は何になってもいいし、一緒に組むパートナーも格段に広がっていく。そういった可能性も含めて僕は“The Spirit of Manufacturing”というワードがものすごく好きなんです。
岡野
そうですね、設備産業の未来にはまだまだ可能性がありますね。本日はお話できてよかったです。INDUSTRIAL-Xさんとのパートナーシップもいよいよ本格始動です。これからどうぞよろしくお願いします。