【イベントレポート】Conference X in 広島 2022
〜デジタルや新技術の“活用(Utilization)” 〜
広島市南区民文化センター
日時:2022年4月27日(水)13:00-17:30(17:30名刺交換会)
主催:株式会社INDUSTRIAL-X、一般社団法人中国経済連合会
場所:広島市南区民文化センター
参加方法及び費用:名刺交換会つき会場参加(10,000円:50名様限定)オンライン視聴(無料:事前登録制)
対象:DX導入に興味関心のある方、DXの最新情報を知りたい方、DX導入推進を検討中の事業会社様、ご担当者様
協賛:一般社団法人中国経済連合会、株式会社BeeX、アルゴG株式会社、ウイングアーク1st株式会社、株式会社ジョイゾー、株式会社PHONE APPLI、ベイシス株式会社
メディアパートナー:ZDNet Japan
協力:一般社団法人日本デジタルトランスフォーメーション推進協会、一般社団法人交通都市型まちづくり研究所
目次
- セッション1
- セッション2
- セッション3
- セッション4
Utilization for Business ~ビジネスを変革するデジタルや新技術活用~
このセッションではデジタルや新技術を活用することで、ビジネスへの活用をしている企業の取り組み事例をもとに討議した。
島根県で交通系の運行管理を行うバイタルリード森山氏は、地方のタクシー運転手の平均年収の低さに注目した。利用者層は高齢な方がほとんどを占めており、移動目的は通院や買い物がほとんど。そこでローンチしたのが通院者や乗り換えのある乗客の予定を最優先に考慮する乗合タクシー。サービスの利用者からは「このタクシーがあるから免許を返納した」という声もある。利用者アンケートからは、利用者の月の外出数の増加と、その目的が「温泉や食事」というLTV(ライフタイムバリュー)へ直結したという嬉しい反響も見られた。
醤油、味噌、清酒、焼酎などの醸造食品の醸造機械、粉体殺菌、土地造成から建築・製造設備を含むトータルエンジニアリングを手がけるのが岡山のフジワラテクノアートだ。シェアが日本トップクラスでありながらそれに慢心せず、将来どういった企業になりたいのかという“開発ビジョン2050”(「醸造を原点に、世界で『微生物インダストリー』を共創する企業」)を策定した。デジタルの活用による社内の改革にとどまらず、新技術を活用した製品開発について藤原氏が語った。
金属加工において「加工できない」という事象に対して「なぜ」を深掘りするために機器のセンシングからシミュレーション、改善をし、DXにおいて重要になる“デジタルツイン”を実際の工場で実現している大阪の山本金属製作所の山本氏はこう語る。「技術はあくまで、日本の素晴らしい技を残すべく、人を育てるために使われるべきです」自動化をすることで人の手がかからなくなる、元々その業務を担当していた人の職がなくなる、そういった発想ではなく、そこに手をかけないことで品質の向上、再現性の担保をし、人は新たな価値創出に頭を使う。これこそDXの本質なのではないかと熱く語った。
・株式会社バイタルリード 代表取締役 森山 昌幸 氏
・株式会社フジワラテクノアート 代表取締役副社長 藤原 加奈 氏
・株式会社山本金属製作所 代表取締役社長 山本 憲吾 氏
・株式会社INDUSTRIAL-X 代表取締役 八子 知礼(モデレータ)
Utilization for Workstyle ~デジタルを活用した業務モデルのスマート化~
このセッションでは、デジタルを活用することでこれまでの業務モデルのスマート化に取り組む企業が討議した。
製造工程において、無駄を削減するために工程を動画で撮影し、可視化をすることで「ファクトベース」での会話ができるようになったと語る広島の東洋電装の桑原氏。35%近くの効率化を実現。「劇的な数字というわけではないが、こういったことの積み重ねが大きな改善につながる」と話した。
デジタルを活用するのは必須。でも無理矢理全員が使いこなす必要はない。得意な人がそれを担うという採用体制や、組織ごとに運行管理、運行実務に特化させるなど全体の最適化を図ることが今後注力していきたい部分と語る広島電鉄の仮井氏。
岡山の総社カイタックファクトリー横山氏は、社内共有する情報を工夫したのだそう。「数字の羅列からグラフに表すことで、直感的に理解ができるようにしています。工場で働くのはほとんどが女性。若い方に限らず、動画でのマニュアルやタブレット操作への抵抗がほぼなかったのが想定外で、安心した点でした。」と語った。
Utilization of the Data ~デジタルを徹底的に使いこなす~
このセッションでは、企業がめざすビジョンを実現するために、データをいかに活用するか、どう捉えているかについて討議した。
ANAでは「お客様の満足向上」のために、「お客様情報基盤」で全てをデータ連携しているという。前回のフライトが遅延してしまった時は次回搭乗の際にメッセージが一言追加されるという。ハイクラスの搭乗者に対しても、精密に管理しているよう。ただ、乗務員は毎回異なるため、人の記憶に依存するのではなく、データで管理することで属人化を防いでいるよう。現場を理解している人間が新たな技術(講演中に紹介されたのはPython)を会得し、また現場に帰っていくことでより現場とDXの距離感が近いのだという。
海外の売り上げが日本の売り上げを超えたという「獺祭」の旭酒造(山口)桜井氏によると、旭酒造は製造人数が日本一(現在150名近く。2位とはほぼ2倍の差)だという。データを活用することで製造現場の効率化が図れ、省人化に向かうと思われがちだが、旭酒造では、データを判断基準として、人の行動のきっかけとしている。あくまで人が嗅覚や触覚を駆使して美味しいお酒を造る。というのが信念なのだという。
年間3000本のお酒を仕込む(一般的な酒蔵の100年分)旭酒造だが、最初は小仕込みで始めたが、だんだん数が増えてきたという。人によっては、データと酒造りの相関性が取れている人においては、自身で進んで試作をするケースもあるという。今はこういった人材をいかに社内に広げていくかというのがミッションである。
First-step for Utilization ~新技術活用をためらう人に贈る金言~
このセッションでは、変革のためにもっとも重要な「目的」をどう見つけたのか、そこからどのようにして現状に至るのかを語った。
最も大変だったのは、新しいシステムを利用者に受け入れてもらうこと。普段身近にデジタルに触れない方に対しては、少しずつ、受け入れてもらうようにコミュニケーションを工夫したと語るウーオ(広島)の板倉氏。これまでブラックボックスだった魚の流通(市場からスーパー)マッチングアプリケーションで可視化することで、現在は少しずつだがスーパーにウーオの魚が並び出しているという。
山口県、萩の商業高校生を対象に、藩校をリノベーションしたアプリ開発センターを開設したPHONE APPLI。石原氏は「これまでエンジニアは大卒理系がマストと思われていたが、分野さえ絞れば、十分世界で活躍できる人材を育てることができる」と強く語った。萩市は1,000kmの道路をたった25名の市役所職員が管理している。アプリセンターで開発された「萩ナビ」は住民が道路の破損を写真で投稿するアプリケーションで、萩の人が萩の街を自分たちでメンテナンスしていくという仕組みが出来上がっているという。
また、昨年12月に開催したConference X in 東京において好評だった「ESG経営セッション」。モデレータを務めたINDUSTRIAL-X取締役の吉川からはオープニングとして「ESG経営ショートセッション」を実施した。ESG経営は、上場企業だけの問題ではなく、サプライチェーン全体での対応が必要になってくる。セッションで紹介されたのは「Qlik」という会社が提出する「データリテラシーレベル」の調査レポートだ。データリテラシーレベルとは、「経営判断に必要な要素がデータで管理されているか、また社員はデータを活用して様々な判断をするインサイト(知識)を持っているか」を指している。日本の評価は著しく低く、日本のDX推進は予想以上に遅れているということが読み取れる。この状況が進めば、日本からの“投資家離れ”は避けられない。ESG経営の鈍化は金融機関との関係性にも影響を及ぼしかねないのだ。また昨今ではESG経営の「G(Governance)」も重大な課題となってきている。社員教育による自社のみの対策にとどまらず、サプライチェーン全体で取り組む必要がある。どの点を取っても、DX for ESGは企業が取り組むべき喫緊の課題である。
DX for ESGの情報についてはINDUSTRIAL-X のYouTubeチャンネルや、Forbesでの記事にぜひ注目を。
(YouTube:「DX for ESG」/ Forbes:「OFFICIAL COLUMNIST」)
昨年8月に初の広島開催を果たしたConference X in 広島とはまた違った形で熱量の高い企業が集結した今回のConference X 。次回の開催もぜひご期待いただきたい。